名古屋高等裁判所金沢支部 昭和28年(ネ)128号 判決
控訴人代表者は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は被控訴代理人に於て、本件仮処分決定の取消を求める理由の事情変更とは、本件仮処分決定の本案訴訟である金沢地方裁判所昭和二十七年(ワ)第一六六号詐害行為取消請求事件が民事訴訟法第二百三十八条の休止満了により訴の取下ありたるものと看做され終了したことのみを理由として主張するものであり、右事件が休止満了により取下と看做され終了した日を昭和二十七年十月二十日と訂正主張すると述べた外原判決事実摘示と同一であるからここに引用する。
<立証省略>
三、理 由
控訴人が其の債務者訴外塚田仁三郎に於て、昭和二十六年八月二十日その第三債務者金沢市に対して有する金額二十三万円の立退補償金債権を被控訴人に譲渡したのは詐害行為であると主張して、被控訴人に対し詐害行為取消請求の訴を提起するに先立ち、被控訴人を被申請人として金沢地方裁判所に仮処分命令の申請をなし、昭和二十六年九月二十七日「本案判決確定に至るまで被申請人が第三債務者金沢市に対して有する債権につき一切の処分を禁止する」旨の仮処分決定を得て、その頃これに基いて執行したことは当事者間に争がない。よつて被控訴人の事情変更の存在の主張について案ずるに、控訴人が昭和二十七年四月二十八日被控訴人を被告として同裁判所に昭和二十七年(ワ)第一六六号詐害行為取消請求の本案訴訟を提起したことは当事者間に争なく、成立に争のない甲第三号証によれば右本案訴訟に於ける昭和二十七年七月十八日の準備手続期日に当事者双方出頭せず、その後三月内に期日指定の申立を為さなかつたので、昭和二十七年十月二十日休止満了により訴の取下ありたるものと看做されたことが認められる。而して被控訴人は休止満了による訴取下の擬制は右仮処分決定の基本となつた事情の変更に該当すると主張するが、訴の取下は被保全権利の存否に影響なく従つて再訴の妨げとならないのみならず、訴の取下によつて保全の必要がなくなるとは限らない。訴の休止或はその取下は雑多な動機・原因から為されるものであるから訴の休止或はその取下ありたるの一事を以て一概に保全意思の抛棄即ち事情変更ありと即断すべきではなく、保全意思の抛棄を伴う休止満了或は訴の取下の場合のみ民事訴訟法第七百四十七条に所謂事情変更に該当すると解するを相当とする。本件に於て控訴人の保全意思の抛棄の存在について何等疏明がないから右休止満了を以て事情変更となすに由なく、却つて弁論の全趣旨殊に被控訴代理人が当審第一回口頭弁論に於て前顕休止満了に係る金沢地方裁判所昭和二十七年(ワ)第一六六号事件の再訴であり現在繋属進行中である同庁昭和二十八年(ワ)第四四号事件記録の取寄を申請し、第二回口頭弁論に於て右記録が顕出され、被控訴代理人に於て之を援用しなかつた事実に徴し控訴人が右休止満了に於て保全意思を抛棄しなかつたことを推認するに難くない。従つて右の休止満了による事情変更の存在を前提とする被控訴人の本訴申立は理由なく、これを認容した原判決は失当であるから民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 山田市平 小山市次 村上久治)